前菜をすっ飛ばしてメインディッシュを堪能するな性も同じだ
おはこんばんちは。巻き舌という物です。
AVを観ながらしこしこ書いていきます。
冷静になって俯瞰すると、AVは非常に面白く感じる。視聴者とは一切関わりのない2人の男女が全裸になりまぐわう様子を第三者的視点から眺め、快感を得るのだ。直接の快感でもあり、間接の快感でもある。実際の性行為も大の大人が服を脱ぎ、抱き合う。人は普段覆い隠されているものが露わになると興奮する生き物なのだろう。痒いところに手が届かないくらいの焦らした露出も、いとをかし。想像力のない人ほどヤリチン説を推したいが、いまいち信憑性には欠けそうだ。童貞だからこそイマジネーションが育めるのかもしれないし、むしろAVを観すぎると想像力が衰えていざ本番の際に困ることがある。期待値が上がっちゃったりもする。あれはファンタジー。ノンフィクション風のフィクションを前提として観ないと痛い目に遭う。少しリアリティを求めるなら素人盗撮もの*1を観なさい。もっとリアルが欲しいなら…続きはwebで。
もう一つ、エロ動画は大体性欲とセットってのがウケる。パブロフの犬みたいにパンツ脱いじゃってるもんね。パンツ脱ぐためにAV観てるもんね。*2性欲解消なしにAVなし。それほど密接に関係してるんですねー。喜怒哀楽の感情は映画、ドラマ、バラエティ、ニュース。快はAVですよ。
恐らく、男女の数だけ見方は異なる。最初から最後まで通しで観る人もいれば、股間が反応する部分だけ早送りしながら観る人もいる。しかし、本当にそれでいいのか。OP、男優と女優の他愛ない会話、インタビュー、これによって人としてのバックボーンを知り感情移入すればより想像力も働き快感が増幅するのではないか。ドラマと一緒だ。ストーリーの設定と役者の設定を知ることで感情が揺さぶられる。例えば俺の好きな素人盗撮ものを例に挙げると、
21歳大学生がナンパされ男の家に行き、酒を飲みつつ過去の話で盛り上がる。酔っていて気分が良いのか口も軽い。経験人数は2人、えーマジで?やり手そうだけどなー、ちょっと何それヤダー、なんて騒いでいたのに徐々にエロいムードを漂わせ、自然にスキンシップ、口数は少なめになり、唇が重なり合い、肉体はむき出しに…
クソベタな官能小説のあらすじみたいになってしまった。つまり「経験人数」「21歳」「大学生」、これらの人物像と「ナンパされ部屋で飲む」場面設定、そしてそれを「盗撮」しているという状況が骨組みとしてあることで、その先は映像を観ながら好きに設定を加えれば10倍楽しめる。文学であり、芸術であり、文化なのだ。
加えて、フェチの数だけ、可能性は広がる。実際の性行為は単純なようで、視覚・聴覚・触覚・嗅覚といった五感の大半を活用する。趣味嗜好によっては味覚もメンバーに動員される。AVだと視覚・聴覚のみに頼らざるを得ないが、妄想力たくましい男性諸君は映像に己の世界を投影させ、セルフVRで現実と虚構の狭間に身を置かせることが可能なのである。この意識の擬似可視化の共有が進められることを願うばかりである。
ここで言いたかったのは、前菜も楽しもうよ!ということです。メインディッシュももちろん美味しいけど、前菜を頂きながら、想いを馳せるのです。そのタメと焦らしがキモなのだと思います。ソープ行って待ち時間が長いのもまた一興。あの不穏な異空間にいるというシチュエーションは前菜です。タバコ燻らせながら、テレビ観ながら口臭用の梅干し食ってりゃすぐ時間は経ちますし、アレも勃ちますから。
最後に気になることを少し。性に関する疑問って人に言いづらいから書いておく。
AVの視聴者が、どの場面、タイミングでフィニッシュするのか統計を取りたくなるときがある。また、フィニッシュは作為的にコントロールして迎えるのか、それとも自然に身を委ねるのか。ちなみに俺は男優と同じタイミングで出したい派である。AV業界の方には是非調べて頂いて、映像制作の参考にしてほしい。
また、これをご覧になった方に聞きたいのが、勃った状態でどこまで曲げんのってくらい咥えたりコキながら腹の反対方向に持っていく女性(女優)いると思うんですけど、あれ男は痛くないんですか?バネのような反動でビタンって腹に戻る映像観るとパンチングボールみたいで痛そう〜って思っちゃう。横に曲げるのも同じく。固くなったら折れそうになるくらいの曲げの分岐点があるんですが、柔軟なchimpoはよく曲がるのかしら。でも自身の経験を思い出したら、多分曲げられた経験はあるはずだけど痛かった覚えはないから大丈夫なんだろう。Yahoo!知恵袋にも不安を解消するようなアンサーがあったので見てみてください。
(真面目)勃起チンコについて質問です。 - 僕はチンコが勃起するとお腹... - Yahoo!知恵袋
この記事を書いた動機は不明である。しかしこの記事を書いている間、ずっとユニコーン"最後の日"が流れながら、手が止まりませんでした。
言葉とぎれとぎれ 肌と肌と触れたら
知らぬまに知らぬまに 裸の僕と 裸の君とI LOVE YOU HONEY 見つめ合って 求め合って 混ざり合って
からみ合って 重なり合って 覆う
胸いっぱいで 胸いっぱいで 夢みたいで
明日になれば後悔するやつでしょうが、大丈夫、みんな同じこと考えてる。
追記(2/13)
ご存知佐倉まなさんが俺の言いたいようなことを、読みやすい文章で的確に表してくれていました。稚拙な文を読む余暇があるならこちらを一読してみてください。
洒落るのは生きている証
見知らぬ他人とすれ違うときに「あ、着こなしかっこいい」と思うことがある。ファッション音痴だろうがよくある。でも呼び止めてどんなテーマで着たのか、あるいは忘れないように写真撮らせて、なんて暴挙には出られない。
そんなむずむずしたときにファッション雑誌が役立つのだなあ、とこの歳にして気づきました。ガン見する必要もなく、どんな気持ちで着たのか聞く必要もなく、心行くまで胸の内を広げてくれる。オシャレをする心理とは無縁な日々を生きていたから、高揚感に包まれながら読んでます。なかなか真似はしづらいけど、服を面白いと思ったの初めてかも。服屋と靴屋は臭いがきつくて好きじゃないってのも、少し変わるかも。
自分なりにオシャレをする度に「痩せないとシルエットが台無しだよなあ…」と思うのだけど、他人に見られる意識を、ポジティブに考えられるとまた違った生き方になっていけるんだろうな。
POPEYE(ポパイ) 2018年 10月号 [FASHION ISSUE みんなのマイ・ウェイ。]
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今週の新譜(1/12-18)
流石に聴く時間も考慮すると、新譜リリース1週間後にまとめることになりそうです。そうします。というわけで、厳密には先週の新譜ですがどうぞ。
- 【Trapped in Chaos / Dust Bolt】
- 【Assume Form / James Blake】
- 【The End of Chaos / Flotsam and Jetsam】
- 【Get It Out / Altitudes & Altitude】
- 【Please Remain Seated / Thunder】
- 【The New Normal / Kane Roberts】
- 【Micro EP / Jinjer】
- 【Sympa / King Gnu】
- 【Native Tongue / Switchfoot】
- 【Why Hasn't Everything Already Disappeared? / Deerhunter】
- 【Who Do You Trust? / Papa Roach】
- 【Live at the Symphony Hall / Magnum】
【Trapped in Chaos / Dust Bolt】
ドイツのスラッシュメタルバンド、4th。平均年齢25歳の若手スラッシャー。金切りボイスだけじゃないスラッシュが好きなので、こういうの大好き。ザクザクリフで押せ押せの一方、爆走一辺倒にはならずミドルテンポで始まりつつ欲しいところで疾走する展開の曲が結構あるため、勢いとしては割と落ち着いていて円熟味を感じる。聞き手によっては物足りないと思うかも。リフの開放弦を交えた組み立て方は相変わらず巧みだな。"Trapped in Chaos"の後半でMetallica"Moth Into Flame"っぽいリズムのリフがちらっと顔を出すのはご愛嬌ですかね。"Another Day in Hell"のようなバラードも出来るってのが喚きと共に歌えるボーカルだからこそ。この曲、バラードでありドゥーミーな進行なのが面白い。物悲しげなアルペジオで進みつつも、泣かせる感じではない。緩急のある流れで締まる終わり方。良いです。
【Assume Form / James Blake】
英シンガーソングライターの4th。ダブステップの手法を用いる、それでいてボーカルや歌詞も柔らかに乗せて広がりを見せるのが上手なアーティストという印象があるのですがどうかしら。ダブステップといっても声がソウルフルで穏やかに進むから踊るというより聴き入る。SSWといっても特殊なのかな。個人的にSSWには思うところがあって、音ではあまり差別化を図れないのかな、と考えている。自分以外固定メンバーはおらず、バンドアンサンブルは編成によって多々変わることがあるから、ある程度音楽性の幅は広がるが音の記名性は少ない。メロディの個性と声と、作詞勝負。aiko、阿部真央、あいみょん、槇原敬之、星野源、米津玄師、etc... 1人で曲を書きギターなりピアノなりで弾き語る表現者は編曲も大事だと思わされる。全て自分で作詞作曲編曲して演奏までする人は別ですよ。その過程を可視化させたのが奥田民生の「ひとりカンタビレ」「カンタンカンタビレ」だと思いますが、詳しくは別の機会ということでこの辺で。アルバムのレビューしてないな、"Tell Him"の不穏な空気良いです。
【The End of Chaos / Flotsam and Jetsam】
米スラッシュメタルバンドの14th。いまいち煮え切らずハマりきれない中途半端さが前作まではあったけど、今作結構良くない?"Demolition Man"の歌メロ、少し手前で曲がる変化球でにやりとする。"Unwelcome Surprise"、"Snake Eye"のような疾走曲もブレイクしたりベースゴリゴリ鳴ってたり面白い。今作では、Overkillに移籍したJason Bittnerに代わってKen Maryが加入して叩いているのが功を奏したか。スラッシュメタルが聴きたくなってこれにするかーとはならんけど、ふと思い出すかも。それくらい意外な良盤。
【Get It Out / Altitudes & Altitude】
AnthraxのBa.Frank BelloとMegadethのBa.David Ellefsonのプロジェクト、1st。クレジットを見るとFrankはリードギターとリードボーカル、8弦ベースを担当。Jrは4弦5弦8弦10弦ベースとリズムギター担当。A Perfect CircleのJeff Friedlがドラム。2人の所属バンドは所謂スラッシュメタル界BIG4の2組なのでヘヴィな音像を期待してしまいがちですが、そうイメージしながら聴くと肩透かしを食らう。非常にコマーシャルで、Foo Fightersを思わせるアメリカンロック的な音。リフ主体というよりは、歌モノとして聴くのが適当かな。ベーシスト2人の作品だからといってメインがベースというわけでもなく。所々主張する場面はあるけど、曲自体が面白みに欠けるのでいまいち。ホームじゃ出来ないことをやろうって息抜きがてら作った感じですかね。それ以上の何かはない。
【Please Remain Seated / Thunder】
英国ロックバンドのセルフカバー作品。過去作をアレンジしたもの。落ち着きのある、洒落た雰囲気になってます。Vo.Danny Bowesの枯れた味わいがよりマッチしている。派手さはないが素敵。
【The New Normal / Kane Roberts】
Alice Cooper Bandの元ギタリスト、6th。ビジュアルはランボーのようなマッチョ。Alice Cooperの長いキャリアの中でも不遇だった時期のギタリストのようで、全面参加は『Constrictor('86)』『Raise Your Fist and Yell('87)』の2作、その後脱退し、Aliceが復活を遂げた『Trash('89)』では1曲のみの参加。その後はソロ作をリリース(Cherのカバー"Does Anybody Really Fall in Love Anymore?"がBillboard Top100で38位にチャートイン)、Steve Vai『Sex & Religion』やDesmond Child『Discipline』などでバッキングボーカルを担当しています。2作とも聴いたことあるのに全然知らんかった。
てことで、今作は7年振りのソロで、Alice人脈のミュージシャンが大勢参加。Alice組からはAlice Cooper御大、次世代フィメールギターヒーローのNita Strauss、Kip Winger、Arch Enemyからはどこにでも顔を出すAlissa White-Gluz、そしてKatt Franich(カバーで共演)、BABYMETALのDr.青山英樹という豪華客演。今作、ゲストもさることながら曲の出来が良い。音質に目を瞑ればクオリティは高く、Kaneの声質もJeff Scott Sotoのような熱唱系なのでメタリックで硬派な曲に合っている。あと総じてアレンジが絶妙。緩急のある展開でスリリングに聴ける。"Beginning of the Dead"はAlissaとAliceの使い方が上手い。気持ちいいところにAlissaのクリーンとデスボイスがハマってる。Aliceの一声でおどろおどろしさの演出が作れるのもでかい。歌メロも秀逸の1曲。"Leave Me in the Dark"は何故かLacuna Coil、Amaranthe、Within Temptationを思い出す、ゴシック的な感触。この界隈をこよなく愛する方々は諸手を挙げて喜べる1枚です。彼の過去作を遡って聴いてみると、良質なハードロックアルバム揃い。80年代HR万歳!
【Micro EP / Jinjer】
ウクライナのメタルコアバンド、EP。最初聴いた時「ツインボーカルね」と思っていたら、女性がグロウルとクリーン使い分けてました。"Ape"の初っ端から、耐性無い人が聴いたら頭痛くなるんじゃないかと心配しそうなプログレッシブ&アグレッシブ。"Teacher, Teacher!"の静と動も映えますね。ベースが面白いなー。
【Sympa / King Gnu】
日本のミクスチャーバンド、メジャー1st。トーキョーニューミクスチャースタイルを掲げる通り、一過性では終わらない本格的なミクスチャーになっていると思う。同世代がこんなの作れんだ…。発売日にYouTubeでリリース記念ライブを配信してたんですけど、Gt.常田さんの縦横無尽なギタープレイ、アーミング使いつつハードでトリッキーな音出してて驚いた。ライブ観に行きたい。全員実力者で嫉妬しかない。シンセやギターの単音リフから始まる曲が多くて、それがまた陽に振り切れない程度にウィットでキャッチー。"Flash!!!"はフレッシュ・エネルギッシュ。"Hitman"、"It's a small world"、"Prayer X"は00年代中盤、CDが売れてた時代のJ-POPのエッセンスを感じるし、所々90年代後期のサザンっぽいフレーズもあって、それが懐かしさを感じさせる所以なのだろうか。そのノスタルジーに現代の売れる要素も加わったらそりゃ敵なしでしょう。"Bettown"のイントロAメロメロディはMr.Children"ボレロ"、さらにその元ネタのSting"Englishman in New York"風なんだけど、決してパクりではなく昇華されていて、サビから後半のヴァースはベースラインから何からエグい。根底にはシリアスな感情があるんだろうなと思わせる"The Hole"、ストリングスが余韻を引き立てる"Sympa Ⅳ"で姿を消す。久々にアルバム買って応援したい邦バンドが出てきた気がして震えてます。
【Native Tongue / Switchfoot】
米オルタナロックバンドの11th。彼らはRight-onのCMに使われた"Mess of Me"で知ったニワカです。あれ9年前なんだね。最近CMを観ることがないから、CMで知らないバンドを知ることが少なくなってきた。Jimmy Eat Worldの"Sweetness"とか、こいつら知らんけどカッケーていう衝動。QueenやBon Joviみたく、日本で最初に火がついて世界的バンドに…ってサクセスストーリーは生まれづらくなってるんだろうな。それはさておき、あそこまでドリーミーでポップではないものの、声質と歌い回しがColdplayを連想させる。前作、前々作に比べるとロック色は減退してますが、歌メロの充実ぶりは相変わらず。より売れる音に接近した様子。
【Why Hasn't Everything Already Disappeared? / Deerhunter】
米インディーサイケロックバンド、8th。特に感想は…。この手のバンドは好きになろうとは思っても、なかなか触手が伸びない。名前は知ってるのでライブラリに追加して聴いたけど、やはり自分の中では引っ掛かりが少ない。入門的な作品があれば教えてください。
【Who Do You Trust? / Papa Roach】
米ニューメタルバンドの10th。このバンドもなー、名前だけで敬遠してしまう。可もなく不可もなく。このジャンルに真新しさは求めちゃいけないね。
【Live at the Symphony Hall / Magnum】
英国メロディアスハード界の重鎮Magnumのライブアルバム。Bob Catleyの声とTony Clarkinのソングライティングがあればそこに英国の郷愁が見える。齢72にして未だ現役クリエイター。Tonyは毎度のことながら全曲作ってるんですが、結成からほぼ1、2~3年置きに新曲リリースしてるのが凄い。絶対的な名曲はなくても安定した作品を届けてくれる。そして、ライブでも過去の栄光にすがることなく、近作からの曲と旧作からの曲を織り交ぜたライブを展開しております。
勝手に僻んで勝手に自滅する。
地元を離れ役者をしている知り合いがいる。高校時代、クラスが一緒だったというだけで、特に親しかった訳ではない。お互い会話をする場面ではどこかぎこちなかった。必要以上の会話をしても打ち解ける融解点など見つからないと分かっていた、それほど彼とは趣味嗜好がかけ離れていたから、顔見知りの関係で終わった。
大学に進学し、さほど連絡を取り合わない知り合いとはSNSで繋がることになる。近況が分かる場はそれだけだ。それだけ、でも恵まれている。彼もいくつかのサービスを利用していた。そこで俺は、役者として舞台に立っている様子を目にした。高校時代はそんなこと全然してなかったのに。何なら俺の方が少し演劇をやった時期があったから、共感と意外性を覚え、少し興奮した。連絡を取ろう。しかしいきなり、少ししか演劇をしてない奴が偉そうに「役者やってるんだ!」とメッセージを送るのは気味が悪いだろう、と気持ちを胸の奥にしまった。埃が被っている。
急に彼の名前と顔がこびりついて離れなくなる。劇団公演のリハーサルの画像、「明日は千穐楽です!」、打ち上げの様子、SNSに挙げられたものを見る度に親近感が湧いてきた。違う世界にいるようで、同じ景色を見ていたんだ。頑張れよ。心の中で応援していた。
ある日を境目に、彼は突然舞台を降りた、ようだった。何が原因かは分からない。公演の情報は途切れ、日常の様子を載せるようになった。映画をよく観に行っている、みたいだった。気に入ったものは熱弁し面白くなかったものにはノーコメント。分かりやすくて思わず笑ってしまう。それに、好きな傾向が同じだ。多分、現実に少し非現実が混ざった作品が好きなのだ。今度映画に関する投稿を見かけたらメッセージを送ろう。
そんなことをぼんやりと考えていたら、彼のプロフィール画像が変わっていることに気づいた。前まではいかにも役者やモデルといった趣きでシックな色合いの写真だったのが、マイクを手に持ちバンド名か何かをシルエットの横に添えた鮮やかで派手なものに。ここからは、それを見た瞬間に感じたことをいくつか並べる。ーーーん?バンド?音楽やんの?全然音楽のこと投稿したことなかったのに?急に?ボーカル?誘われた?うわ、舐めてるよ。音楽知らないくせに。
役者をしている君は応援するけど、生意気に素人が音楽やるなら応援しない。
こう、こんな、急に冷めた俺を、俺はまた冷めた目で見ていた。少しばかり音楽聴いてるからって、それがお前のテリトリーだと思うな。縄張りを荒らされたように感じるのはお前だけだよ。なーに自分の世界で自分で被害を作って困ってんだ。
そもそも。
何も知らないのだ。彼の情報はSNSの中でしか知り得ない。写真を変えた理由、彼のそこに至るまでの過程なぞ何も知らない。書かれたことだけ。それなのに、勝手に「音楽のことなど何も分からないくせに」と断定し、嫉妬している。考えてみれば、高校時代にも面と向かって何が好きか聞いたことはなかった。聞かずして趣味嗜好が合わないと決めつけ距離を置いていたのだ。出会いにはタイミングもある。そして偶然であろうと自らの働きかけで必然にすることも出来る。ところが何の一歩も進んでいない俺は、何を批判できる?
一方的な受け取りは恐ろしい。今、これを書きながら自身の傲慢さと過ちをどうにか認めようとしている。
柔と剛、軟と硬。
1週間前、下痢に悩んでいた。今では数少ない後輩と飲みに行き、毎度のごとく別れた後から記憶がない。帰路と、寝るまでの行動が全く思い出せない。
人といる時は気が張っているのだろう、酔い潰れた者がいれば介抱するし、部屋までおんぶして朝まで安否を確認することもある。脳が俺にしっかり者のフリをさせるのだ。しっかりしているから、部屋まで連れて行くのが女性だとしても、ベロンベロンの状態であれば手を出さない。父娘のように見守る。下心よりも心配が勝つ。スーフリ事件のクソ野郎共は、ここから先が真の目的だろう。あれは犯罪である。俺は「楽しく飲む」が目的なので既に果たしている。リスクを負ってまで性欲を満たそうとする人の気が知れない。非常に男性的な考えだと、ヤるのだろうか。相手が好意を寄せてくれてあわよくば、のスタンスは崩さないでいたい。
全く思い出せない、に戻る。全く思い出せないことはない。集中力の切れた酔いどれは部屋で酔いが回り好き勝手しているから、朝起きれば、酔った俺の形跡がいくつかある。これで断片的に記憶が蘇る。この日は机上に大量のチョコレートが撒かれていた。朝食にしなさい、と酔った俺の献身的なメッセージである。当然片付ける。片付けながら、服装が寝間着になっていることに気づく。酔った俺は、律儀にジャケットをクローゼットに仕舞い、気持ちよく寝る態勢を整えてくれていた。ありがとう。だが、毛布をあげると甘い匂いがする。出どころを探す。あった。体温ですっかり溶けたアポロチョコだ。毛布についているのが不幸中の不幸、その日の午前中はチョコレートバスターズを結成、期間限定の清掃活動を行い、そんなことをしているとお腹が緩いことが発覚する。
次の日も、その次の日も出るものが緩い。もしかして:ノロウイルス と浮かび、病院へ向かう。診察は、いつも馴れ馴れしく話してくる女医だ。もう30歳若ければ、喜んで喋って延長もしたいしシャンパンも入れたいくらいだが、病院だしそうもいかない。おばさんはスーパーナチュラリストのようで、レントゲンや腹部のエコー検査(ジェルを塗られるあれ)もなしに、お腹を押すだけで「インフルでもノロでもなく胃腸炎、ストレスからくるやつだね」と言う。俺は診察室の、医師の後ろに何人か立っているアシスタントが鬱陶しくて仕方なかった。複数の女性に、沈黙の中お腹を晒すなんてとんだ羞恥プレイじゃないか。あれはやめた方がいいです。すげぇ気になる。女医は薬を出してくれた。あの超能力者の言う通り、ただの胃腸炎だった。しばらく水性の下痢止めや凝固系の薬を飲んでいたら、すっかり腹痛や下痢に意識が持っていかれることもなくなり、すばらしい日々を送れるようになった。ぼくらは離ればなれ、やっほいである。
それから1週間後。今は朝9時だ。お腹が痛い。トイレに駆け込むと、硬いものがちょろっと出る。どれくらい硬いかと言うと、人を殺す鈍器になり得るくらいだ。触っていないため諸説あり。硬さは下痢に比べれば全然問題ない、それより尻切れとんぼなのだ。まだでたがっている排泄物はあるはずなのに、これ以上出ない。便秘、と言うやつだろうか。お腹が痛いのに出ないのは、下痢よりも厄介かもしれない。良くなる薬は良いところで止めておかないと、毒薬にもなる。今が踏ん張りどころである。