何者(2016) / 他人事では観られない。
原作は何度も読みました。大学入る前、そして卒業する予定だった年(2016年)。これは大学入る前に読んじゃいけないやつだ…と初めて読んだ時に背筋ゾッとしたのを覚えています。
この作品と「学生時代にやらなくてもいい20のこと」を高校生の時に読むと大学入学後のギャップに苛まれてしまいますので是非大学合格後に読みましょう(引きずりこむやつ)。
「何者」はフィクションとはいえ朝井さんの経験も多分に含まれているはずなので、4年後こんな感情渦巻く環境で闘わなければいけないのかと、バラ色の大学生活を夢想していた俺には強烈なジャブでした。
そして就活戦争とは無縁のまま時は流れ(笑)、2016年同級生は就活真っ只中、俺は卒業できるかできないか境目にいた夏、思い出したようにこの本を手に取り再読したのでした。
ツイッターで感想書いてるのを引っ張り出したら、こんなことつぶやいてました。
朝井リョウ「何者」読了。大学入る前に読んだものを大学出る前に読む。見える風景が違う。こうやってつぶやく自分も何者なのかもしれんね。自己暗示をかけないと生きていけない承認欲求の塊。線路のくだりは、4年前もグッときた気がする。カッコ悪い自分を好きになりたい!
この線路の件ってのはクライマックス手前の拓人が走る場面ですかね。このツイートから2年、分かってはいるのに何も変わっていない。何もできていない自己を肯定したいがための「冷静沈着なまなざしのフリ」とでも言ったらいいのか。
…前置きが長くなってしまいましたが、映画の方の感想を。
人のアマノジャクを笑え
個人的には酒飲んでないと観てらんねぇやつです。当事者として観てしまって、登場するそれぞれの大学生と重ね合わせてしまう。
俺は演劇などに打ち込んでこなかった拓人のようであり隆良のようでもある。外から「さみぃよ」と、10点も20点も出してないくせに偉そうに眺めるタイプだから心エグられるんです。恥も外聞も無く全てをさらけ出している人達を、自身は傷つかない高みの見物で観察して分析して満足する。
隆良の就活全否定ってのも分かるのよ。今の俺が同じこと考えてるから。敷かれたレールをそのまま走ってても面白くないだろって思ってる。ただ、それは言い訳に過ぎない。事情があれど大学を留年した、そして就活を一切していない(できない)自分を守るために取り繕っているだけだって分かってるんです。斜に構える自分がいたら、自分自身は傷つかないから。でも正論言われたら脆いよ。
どちらが世間に見てもらえて、受け入れられるか。いつもこの作品にぶん殴られます。
いろんなニュースが毎日流れ、例えば最近では辺野古埋め立てのデモ活動やら何やらが話題になってます。それらには批判があり、賛辞がある。どちらが正しいとかそういうことは置いといて、こういう賛否が起こるということは誰かが行動してるから。何かのために自ら動くってだけでも、何も動こうとはしない人に比べればマシだと思う。アクションしなきゃ始まらないんだよ。
大学を卒業しても、しばらくこの呪縛からは逃れられないかもしれない。冷めた目で見つつ、部屋で集まって酒飲んだり就活対策したり、俺とは違うなーってそういうところも気になっちゃった。現実でもこういうことしてたんだろうな、みんな。 同じようなルートを歩んできてないのに同じようなことしたいっていうのはどこかに空っぽな虚栄心や羨望が残ったままなんだろう。
天邪鬼というか、恥ずかしい目で見ていたものは、実は自分がやりたくてやれなかったものだった。自分の中の傑作で終わらせたくない。
「なーにやってんだよこいつら」と笑って観れる日がくるのかな。